土壌汚染発生の特殊性
大気汚染や水質汚濁と異なる土壌汚染独自の特徴がある。
この項目は、地下水汚染の記述と重複する。
公害を体感しにくいこと
土壌汚染は、体感しにくい公害である。有害物質であるにもかかわらず、それが地下に浸透することにより、目視・においを体感しにくくなり、有害性を感じにくくなってしまう。有害物質を地下に浸透させるという行為は、体感できないがゆえ、公害を発生させているという認識が甘くなり、結果として公害の防止対策として低く扱われてしまう。各種法令等の公害防止施策が制定される以前は、屋外ヤードに野積みによる漏出や、行政指導による工場敷地内への廃水の地下浸透など、土壌に有害物質が染みこみやすい状況にあった。
長期にわたり滞留・蓄積する(拡散が非常に遅い)こと
土壌に浸透した有害物質は、吸着などの現象により、土壌のみの汚染は地域的に限定されやすい。また地下水に汚染が拡散したとしても、地下水自体の流速が極端に遅いことも、滞留・蓄積性の高い汚染現象といわれる所以である。
地盤の環境機能は公共財的性格が強いが、土地は所有者の私的財産であること
地盤の持っている環境機能は、大気や陸水と同様、ほぼ公共財として機能している。ところが地盤そのものは土地として私有財産となっており、この環境機能も土地の構成要素として含まれている。土壌汚染の対策では、憲法で保障された私有財産に様々な制限を加えることが考えられ、この点について、まだ定まった考え方がない。同様の議論は昭和40年頃から続く地下水についての「私水論/公水論」の歴史があるが、地盤の環境機能として土壌や地層を含む地盤環境全体の考察はほとんどない。
汚染原因者負担の法則(汚染者負担原則)の厳格な適用が困難であること
蓄積性の高い汚染であるため汚染発生時期を捉えにくいこと、物質の有害性の認識が後になって変わること、の2点により、汚染の発生時期や汚染原因者を厳密に特定することが困難である。
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